【シリーズ】構造物の維持管理に役立つ知識〈全8回〉
寄 稿: 松村 英樹(一般社団法人 日本構造物診断技術協会 代表理事/技術アドバイザー室長)
#06|構造物診断についての豆知識(その1)
今回からは、道路橋に発生しているいくつかの変状を取り上げ、その発生メカニズムについて解説する。
橋面のアスファルト舗装に発生する変状について
道路橋の各部位・部材に発生している変状にはその箇所に直接的な原因があるものと、その箇所以外の部位・部材に間接的な原因があるものがある。初回は橋面のアスファルト舗装に発生している変状を取り上げ、直接的、間接的な発生原因を解説する。
橋面のアスファルト舗装面にはひび割れ、わだち掘れ、ずれ、滞水、ポットホールなどさまざま変状が発生する。
それらの中には舗装材料の老朽化や大型車両通行の繰り返しによる経年劣化が原因の変状がある。一般的にアスファルト舗装の耐用年数は10年から15年とされており、舗装面の変状が顕在化してきた時点で打ち換えられ、安全かつ快適な車両走行が確保されている。
1.上部構造の損傷に関連する舗装の変状
上部構造の損傷が舗装面の変状に関連している例として鋼床版箱桁を取り上げる。この構造形式の舗装面には、橋軸方向または橋軸直角方向にひび割れが発生していることがある。ひび割れ位置を調査すると、主桁や縦桁、Uリブや横リブ配置位置に一致していることがあり、それらに発生している損傷に関連していると判断される1)。
【写真1】と【図1】は鋼床版箱桁のウェブ直上にひび割れが発生している事例である。原因は大型車の輪荷重が主桁ウェブを跨ぐように作用し、アスファルト舗装が負曲げ応力を受けてひび割れが発生したものと考えられる。このようなひび割れがあると、その直下に位置する主桁の垂直補剛材上端部に疲労亀裂が発生していることがある。また、鋼床版のUリブや横リブに沿ったひび割れが見られる場合も、その位置に疲労亀裂が発生していることがある1)。


このような事例への対応としては、疲労亀裂の発生状況を確認した上で対策を検討する必要がある。重交通下にある鋼床版箱桁では疲労亀裂が進展してデッキプレートを貫通した事例もあり、通行車両の安全走行を脅かす危険な事態となった。このように貫通した事例の大半が板厚12㎜であったことから、現行の令和7年版道路橋示方書(以下道示)では大型車が常時載荷される位置直下の厚さは16㎜以上と規定されている。2)。
一方、コンクリート橋ではプレテンPC中空床版の上面に発生したアルカリシリカ反応(ASR)による軸方向ひび割れと舗装の軸方向ひび割れが関連していた事例がある2)。
また、RCやPCのホロー桁ではボイドの浮き上がりにより、ボイド上のかぶりが小さくなり、【写真2】のようにかぶり部分が脆弱化することがある。この場合も舗装面にひび割れが発生していた。
このようにアスファルト舗装にひび割れが発生している場合は、上部構造の損傷発生を疑ってみる必要がある。

2. RC床版上面の土砂化に関連する舗装の変状
鋼桁のRC床版上のアスファルト舗装に【写真3】のように不規則な方向のびび割れが見られることがある。ひび割れから水が滲み出した跡があると、舗装内に雨水等が滞水していたと判断でき、RC床版上面が【写真4】のように土砂化している可能性がある。


土砂化とはコンクリートの骨材と硬化セメントペーストが分離している状態をいう。硬化セメントペーストは脆く崩れやすい状態で、これが深さ方向に進行するとRC床版の疲労耐久性は著しく低下し、大型車が通行することにより床版が抜け落ちることもある。また、橋面センターライン付近の舗装の打ち継ぎ目に水の滲み出し跡がある場合も土砂化の可能性がある。
これらが確認された場合は舗装を撤去して床版上面の土砂化状況を調べ、床版の部分打ち換えなどの対策が必要となる。
土砂化する原因は、舗装ひび割れに浸入した水による凍害やアルカリシリカ反応、融雪剤に含まれる塩化物イオンを含んだ水による床版上面鉄筋の腐食などがあるが、ひとつだけの原因ではなく各劣化因子が複合していると考えられている3)。
土砂化を防止するためには床版上面に防水層を設けることが有効であり、道示では設置することが規定されている。
3. 橋面防水工に関連する舗装の変状
RC床版上面の土砂化防止対策として道示の規定もあり、既設橋でも舗装の打ち換え時に防水層が設置されている。しかしながら、防水層の設置後にブリスタリングが発生することがある。この現象は【図2】に示すように防水層とRC床版あるいは防水層と舗装の間に存在する水分が夏季に水蒸気となって膨張し、舗装にひび割れやポットホールが発生する舗装の再劣化現象である3)。

【写真5】はRC床版上面の土砂化に対してアスファルト舗装で補修した例である。打ち換えられた部分にブリスタリングやポットホールが見られ、防水層の施工時に不具合があったのではないかと推測される。

ブリスタリングの発生を防止するためには、防水層は床版が十分に乾燥した状態で施工する必要があり、防水層の設置時にはRC床版の表面の含水率10%以下が目安とされている3)。
また、防水層施工後の防水層露出状態を長期間放置することは、防水層の性能低下やブリスタリングの発生を引き起こす可能性があり、可能な限り早い時期(1週間程度以内)に舗設することが推奨されている。
このうち、自由塩化物イオンは鉄筋の不動態被膜を破壊し鋼材の腐食に関与するが、フリーデル氏塩に固定された塩化物イオンは不働態被膜を破壊することはなく腐食には関与しない。しかし、空気中の二酸化炭素がコンクリート中に進入しコンクリートの中性化が進行すると、二酸化炭素がフリーデル氏塩と反応し、炭酸カルシウム(CaCO3)と塩化カルシウム(CaCl2)を生成する。これによりフリーデル氏塩に固定されていた塩化物イオンは解離し自由塩化物イオンとなる。
この結果、中性化していない場合と比較すると、多くの自由塩化物イオンが拡散することとなり、鋼材の腐食進行はより加速される。
《次回は2026年6月にUP予定です》
【参考文献】
- 国土技術政策総合研究所:鋼部材の耐久性向上策に関する共同研究-実態調査に基づく鋼床版の点検手法に関する検討-,国総研資料第471号,2008.8
- アルカリ骨材反応が生じたPC橋の調査,診断と対応事例:土木技術資料,55-7,2013
- 独立行政法人土木研究所:道路橋コンクリート床版の土砂化対策に関する調査研究,土木研究所資料第4398号,2020.3
- 日本道路協会:道路橋床版防水便覧,2007.3

